よく都会から田舎に移住した人が、その地域に溶け込めなくて失敗したという話を聞きます。


特に人間関係。田舎は近所づきあいが濃密なので、希薄な人間関係に慣れている都会の人は大いに戸惑うかもしれません。


都会の人が「あ、この地はのどかで癒される!ここに住みたいな。」と思う場所って、総じて昔から人が住んでいるところが多いと思うんですよね。歴史があるからこそ近所づきあいも濃密なわけで、のんびりした生活を連想していたら、地域の行事に引っ張り出されて全然のんびりできなかったという例は結構あると思います。


そういう失敗を避けたい方は、田舎の中でも新興住宅地やマンションに住むことをおすすめします。


ワタシは伏木という街に移住してきたわけですが、伏木の地縁の濃さは富山県内でも有数だと思います。一番驚いたのは正月。町内の壮年男性は元旦朝7時から礼服着用で神社集合。みんなで神主のお祓いを受けます。その流れで朝から公民館で飲み会(笑)。新年一発目の顔合わせは家族ではなく地域の方々が先なのです。もちろん強制ではないですよ。でもそういう習わしというか暗黙のルールのようなものが脈々と受け継がれているんです。


そんな習わしを、時代に合っていないからとバッサリ辞めてしまうのは簡単です。でも人が集う機会というのは、一度無くしてしまうと、取り戻すのにとても時間がかかるんです。もしも自分が生活に困った時に、地域の結び付きがなかったとすれば、頼れるのは①自分の家族・友人と②行政の公共サービスの2択しかありません。このうち公共サービスが今後あまり期待できないであろうことは年金問題などからも明らかです。ですので地域の結び付きというのは、それがあることだけでも大きな財産だとワタシは思うんです。


もちろん時代に合わせて過去のやり方を変えていくことも大事です。ただ何でもかんでも合理的に片付けようとすると失敗すると思います。なぜなら地域には色んな世代や立場の人たちが共存しているから。例えばワタシの町内では秋の祭りで獅子舞をするのですが、踊りにマニュアルのようなものはありません。全て口頭伝承です。地域の人々が毎年集まって「あぁでもないこうでもない」とビール片手にワイワイ練習する。一見するとダラダラしているように見えますが、こういうやり取りの中で、世代や立場を超えた会話が生まれてきます。それが大事だと思うんです。なので多少の非合理性は目をつむるというか、むしろ楽しむことが大切だと思います。仕事じゃないんだから(笑)。


そういうわけで、田舎に移住を希望される方は、あえてその地域のしがらみの中に飛び込んでいくといいますか、むしろそれを楽しむくらいの心構えがあった方がよいのではというのがワタシの感想です。「郷に入れば郷に従え」とはよくいったものです。